研究者として、
輝きたい
女性たちの為に。
ダイバーシティ研究環境実現
イニシアティブ(牽引型)
若手にも責任ある仕事を任せる社風の中で、様々な新しい研究に挑戦されてきた河崎所長。ご自身の多様なライフスタイルや子育て経験を活かした研究テーマにも取り組み、商品開発やお客様へ「暮らし方」の情報発信も行われてきました。長年追求されてきた「幸せ住まい」をテーマにした住生活研究の知見や管理職として身につけられたリーダーシップで、女性研究者のリーダー育成にも尽力されています。
父の仕事の関係で幼少の頃に様々な国で育ち、多種多様なライフスタイルを経験。国や環境によって変化する、暮らし方、住宅の間取りについて考えるのが好きでした。また、小・中学校の頃はグリーティングカードの折り方を創意工夫し、平面の紙が立体に変化する様が、大変面白く感じた事を今でも覚えています。
その後、日本の高校へ進学し、得意だった理系のコースを選択。父の影響で薬剤師や医者を目指しましたが、化学の実験で実験器具を何度も割ってしまった事があり、先生から「君は、そそっかしいから薬学に進むのは辞めたほうがいい。」「空間認識能力が優れている。建築学はどうだろう。」と薦めていただきました。母からも「幼少のライフスタイル経験が豊富だから、これからの日本の住空間に対し、様々な提案ができるのでは」と背中を押されたこともあり、大学で建築学を学びました。
入学前は「住宅を作りたい」と思っていたのですが、入学後には「構造力学」に興味を持ち、ダイナミックな橋梁やダムの構造がもつ美しさに夢中になりました。その後、日本建築史のゼミで源氏物語を読み解き、その時代の空間について研究し、日本の風情や文化、暮らしについて探求するようになりました。
積水ハウス入社後は研究部門に配属。採光や照明、色彩の心理的な効果を研究する「視環境」を担当。当時は「総合住宅研究所」の建設計画が進行中で、入社1年目から「人工天空システム」で実験する設備の企画・設計にも携わりました。上司がとても女性活躍に理解がある方で、いろいろと教えていただき、施主代表として建設会社の方へどんな実験設備を作ってほしいのか説明を任されるなど、得るところの多い経験ができました。
また、この時の上司に数字の分析方法や、扱い方の大切さを徹底的に教授していただきました。当時は現在のようなグラフを作成するソフトウェアはなく、グラフを作るためのプログラミングから携わったことで、複雑な計算式が組まれているプログラムも理解できるようになりました。それにより、経済や経営の数字の読み方がわかるようになり、研究者としての礎になったと思います。その時の上司に習い、私も若手社員に教授する際は自分の頭で数字を理解するように伝えています。
同じ部署の研究職の夫と結婚し、5年後に出産。1年間の育児休暇でハイハイから歩行までの大切な時期を一緒に過ごせたことは、研究者としても貴重な体験になりました。子育て中の友人を招いて子どもの行動を比較分析し、子どもが自然に集まる場所についても新たな発見があり、楽しかったですね。
職場復帰後は内装のシステム開発部で、住生活研究とキッズデザインなどの「暮らし提案商品」の研究開発を担当。育休中の経験や、家族や暮らしについての研究成果を実際に商品開発へ活かし、心地よく暮らせるための窓の開発や、子育ちのために一段床を低くした『ピットリビング』の開発も手がけました。
私も夫も家事と育児は、お互いに半々でしたいと考えていたのですが、私が1年間育児休暇を取得したので、次の1年は夫がメインで子どものお迎えや、食事を担当。子どもが夫に懐き、夫の育児に対するモチベーションが上がってよかったと思います。私は少し寂しい思いもありましたが、復帰することに注力しました。その後も、定時出勤では保育園のお迎えに間に合わないので、上長と相談してメンバーに同意を得ながらですが、夫と私で1日交代のフレックス勤務を活用し乗り切りました。
住生活研究では新聞やニュース、雑誌などから社会情勢を読み解き、人々の暮らしがどのように移り変わるかの長期予測を1年に1回レポートにまとめています。そのレポートテーマが商品化につながると確信した後、調査データを元に社内の営業や設計士と話し合い商品化します。さらに、発表した商品は時代の変化に合わせて更新も必要なので、常にアンテナを張り、オリジナリティのある新鮮な提案を出していくことが求められます。
これまでペットと暮らす家づくり『Dear One』、子どもの生きる力を育む家『コドモイドコロ』、収納問題を解決する『収納3姉妹』、食から考える住まいづくり『おいしい365日』など、生活ソフト商品を開発してきました。私たちの研究で、「視線が変わることは子どもの発達に大切なこと」がわかったので、『コドモイドコロ』は「子どもたちとこのように暮らして欲しい」とお客様に伝えたくて、「子どもとの暮らし方」を提案する読み物も作成しました。
2018年に住生活研究所が設立され、家族のために幸せ住まい『ファミリースイート』を発表。ファミリースイートは充分な広さがあるので、家族が思い思いに過ごすことができる、居心地の良いリビングです。リビングの柱をなくすことで大空間を実現したライフステージに合わせて部屋を自由に使うことができます。
住生活研究所では「健康」「家族のつながり」などの「幸福感」を追求するテーマに取り組んでいます。ビジョンである「住めば住むほど幸せ住まい」のノウハウを科学的・理論的に明らかにすることで、住む方が幸せに気づき、実感できる「幸せ住まい」を提案していきたいと思っています。
2017年4月より大阪市立大学と女性研究者のリーダー育成を目指した「産学官連携ウィメンズユニット(WUSO)」による共同研究プロジェクトがスタート。テーマは団塊の世代が後期高齢者(75才以上)になり、介護や医療費など福祉の需要が急増する「2025年問題」を解決するために、地域の人と家族を支える仕組み・家・考え方が大切になってくると提唱し、大家族でつながって暮らすことに注目し、生活科学研究科の先生方と「多世帯住居に関する研究開発」を行っています。
また、大阪市立大学から女性研究者を受け入れて共同研究を進めています。企業と大学では仕事の進め方やスケジュール感覚、力点の箇所が違うので、お互いに理解を深め、ギャップを埋めながら研究を行います。大学の先生は1つのグラフについても、細かに分類や条件分けを検討するなど、データへの熱意が素晴らしく、改めて研究者の視点の大切さを感じました。若手研究職の社員たちにとっても刺激になると思うので、お互いに成長してほしいと思っています。
そして、多世帯での暮らしと、その経年変化についての実態を把握し、ライフスタイルや家族構成によって住まい方を提案できるように研究を進めていきたいと思っています。
アロマをデスクに置いてリフレッシュしています
自分が携わりたい仕事や、志望する研究があったとしてもやりたいからできるわけではなく、社会の流れや運があると思います。自分の前に流れてきたことに興味がないからと素通りするのではなく、何事にも興味を持ち、好奇心を絶やさず、学び挑戦してほしい。
また、研究は様々な事象を正確に捉えることが重要なので、分析力を若いうちにしっかりと身につけておけば、どんなテーマや課題に対しても答えや出口を見つけられると思います。