生涯働けるフィールドを目指して

「自分自身を商品として勝負できる仕事」を探した就活時代、「新卒採用の重要性」を説いた企業時代、「学生のキャリア・デザイン」支援に取り組まれている現在、一貫しているのは “生涯働ける仕事”への想いでした。社会人院生としてご自身のキャリア形成にも積極的に取り組んでこられた本庄先生は、学生視点、教員視点、企業視点、そして子供を育てる親の視点から、学生だけでなく教職員の方々をも見守られています。

和歌山大学 経済学部
経済学研究科 キャリア教育担当 キャリアコンサルタント CDA
本庄麻美子助教 MAMIKO HONJO
1975年生まれ。和歌山大学経済学部卒業後、人材コンサルティング会社で新卒採用戦略のコンサルティングや就職ガイダンスの講師などを行う。2004年CDA資格を取得。和歌山大学経済学部の助手、キャリアカウンセラーとして着任。実践的なキャリア研究や学生のキャリア相談対応、講演活動にも取り組む。
1,キャリア形成の道のり
男女関係なく生涯働けるフィールドを目指して

私は子どもの頃から、専業主婦の母だけが子育てや介護でキャリアを分断していることについて疑問に思っていました。母は不満に思っていなかったようですが、私は「生涯働ける仕事に就きたい」と考えるように。「何になりたい」という明確なものはありませんでしたが、何か社会に役立つ仕事ができればと思い、社会を取り巻く環境について学ぶため大学は経済学部を専攻。就職活動では性的役割を求められない総合職で、自分自身を商品として勝負できるフィールドを軸に探しました。ただ、当時は超氷河期の真っ只中。企業への資料請求はがきを200枚送り面接を60社受け、内定をいただくのも苦労しましたが、その中で自分の軸にあった人材コンサルティング会社に就職しました。

配属先の営業部の教育担当の先輩は、女性の部下は初めてで「どのように扱ったらいいか」と聞かれたのですが、「これまでの部下と同様に指導してほしい」と伝えました。仕事内容は新規開拓なのでテレアポや飛び込みが中心。アポがとれた会社から営業訪問を行い、新卒採用の年間を通した戦略を提案します。新規の会社では、社長や役員の方とお話ができるので楽しかったですね。当時は景気もよくなかったので採用を控える時代だったのですが、コツコツと新卒採用の重要性を提案し、お客様と信頼関係を築いていきました。

企業と学生をつなげるキャリアカウンセラーとして大学へ

3年ほど営業を担当し、主任、係長を経験。2001年に結婚したのですが「結婚したから営業成績が下がった」、「仕事をしているから家のことができていない」と周りから思われないようにと、自分では気づかないうちに無理をして体調を崩すこともありました。仕事が楽しかったので精神力で乗り切れた気がします。その後、営業の新人教育や営業アシスタントの育成など営業支援やマネジメントも担当しました。

学校企画部という部署からの依頼で、私は大学の就職ガイダンスで講師を担当する機会が増えました。そんな中、大先輩の社員の方から「あなたにぴったりの資格だから勉強してみては」とキャリアカウンセラーの資格を薦められました。ちょうど学生から個別に相談を受けることもあり、自分の価値基準でアドバイスしていいのかと思い始めていた頃だったので、「きちんと学ぼう」とキャリアカウンセラーの資格取得を目指して勉強を開始。そして、養成講座で初めてキャリアの理論に出合いました。
資格の勉強中に、和歌山大学の経済学部長から「2004年の国立大学法人化を機に、学部の出口支援を強化するためにまずは5年間手伝ってくれないか」と声を掛けていただいて。自分のフィールドを広げられるチャンスと思い、2004年から和歌山大学経済学部の助手として着任。教員2名で「キャリア・デザイン」という科目を開講し、キャリアカウンセラーとして学生のキャリア相談も始めました。

2,ライフイベントに直面した時
仕事が形になってきた頃に妊娠・出産

2年目の2005年は教育学部の佐藤史人先生と全学的なキャリア教育科目を開講。その時に佐藤先生から論文を執筆することの重要さを教えていただき、少しずつ共著で論文を書くようになりました。

同時に4年生の内定者による下級生への進路・就職支援活動「スチューデントリンク」が学生の有志から自発的に発足。就職活動を経験した4年生から進路・就職に対する考えや姿勢を学び、4年生は下級生を支援することで自らも成長できるシステムができて、仕事が少しずつ形になっていきました。

その後、学部内で学生に寄り沿う支援を行う体制を築いていく中で妊娠が判って。もともと私は結婚する前から子どもを産まない選択も考えており、パートナーも考えを理解していました。しかし、親族の流産や不妊治療の話を聞くうちに「仕事が楽しいからという理由で、産まないことが本当にいいのか」との思いに至り、産むことを決意。育休中の代替教員については、キャリアカウンセラー同士の研究会で出会った仲間から信頼できる方にお願いしました。

出産後、いよいよ復帰が間近になってきた頃に第二子の妊娠が判りました。2年間休むと当初の約束だった5年の区切りがきてしまうので私が少しでも早く復帰できるようにと、パートナーが半年間育休を取得しました。今も家事・育児を分担し協力し合えています。

3,研究者として新たな一歩を踏み出す
社会人大学院で学び新たな研究テーマに取り組む

復帰して半年後5年の約束を果たしましたが、そのまま同じポジションを任せてもらうことになりました。そして、和歌山大学が文部科学省の「大学生の就業力育成支援事業」を採択し、プロジェクトメンバーとして全学的な推進を行いました。年子の幼い子どもを抱えての業務はハードでしたが、パートナーと二人三脚で子育てをしました。子どもが病気になった時はどちらが仕事の折り合いをつけるのか困ることはありますが、週末にスケジュールの共有をしっかりし、お互いが穴を開けないように調整しました。

私は実践的なキャリア教育やキャリア形成支援を中心に行ってきましたが、子どもたちが小学生になり以前よりは手が離れてきたので「しっかり論文を書けるようになりたい」と思うようになり、2015年から大阪府立大学大学院経済学研究科 経営学を専攻。平日週2日の夜間と休日に通い、大卒初期キャリアでどのようなリアリティショックが早期離職につながるのかをテーマに研究を行いました。修了後も和歌山大学の卒業生の協力を得て、継続的にこのテーマの研究に取り組んでいます。研究者の一歩を踏み出したばかりですが、若い学生への知見としても提供できればと思っています。

4,女性研究者へメッセージ
困ったことがあれば発信する勇気も必要

大学教員はそれぞれの専門分野で研究されているので、企業と比べて日々協働して仕事をする機会は多くはなく、ほかの教員に頼りにくい部分があるように思います。子育てや介護などプライベートな部分を話すことに抵抗があるかもしれませんが、話すことで気が晴れることもありますし、困った時は助け合えると思います。

私の場合、職員の先輩ママさんがお会いする度に私が子育てで大変なことを気に掛けて声を掛けてくださり、その方にだんだんプライベートについてお話したくなって。思い切ってランチをお誘いしたことをキッカケに色々とアドバイスをいただいたり、励ましていただけるようになりました。

私も子育てなどで困られている教職員の方がいれば、声を掛けていきたいと思っていますが、もし困っていることがあれば自己開示していく勇気も必要なのかなと思います。共有することで周りも気付けたり、何か手伝えることがあるのではと思っています。

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