自分の価値は自分で創りだす、それが自信に繋がる

仕事が楽しすぎて子供を持つか悩まれたことも今は昔、技術職で培われた探究心、管理職で身に付けられたリーダーシップを基に、社内で仕事と育児の両立支援をはじめとした、社員一人一人の人生を充実させるための役職に就かれている小谷部長。仕事に育児に自分の人生、妥協せず常に真摯に向き合われてきたバイタリティー溢れる小谷部長の言葉は、話を聞く私たちの心まで強くする、不思議なエネルギーに満ちています。

積水ハウス株式会社
CSR部長 一級建築士
小谷美樹 MIKI KOTANI
1966年生まれ。1988年大阪市立大学生活科学部住居学科を卒業後、積水ハウスへ技術総合職として入社。住宅設計や内装、省エネ開発などを担当。結婚・出産後も本社技術本部に勤務。開発部課長や女性設計長を経て、2014年経営企画室ダイバーシティ推進室部長へ。2017年大阪商工会議所が企業の業績向上や文化活動に貢献した女性管理職やリーダーに授与される「大阪サクヤヒメ表彰」最上位の「大阪サクヤヒメ大賞」受賞。
1,キャリア形成の道のり
一生働ける仕事をするため、知識・技術・資格を取得

私は父が総合建設会社の橋梁技術者で、母がアパレルのデザイナーとして働いている姿を見ていたので、子どもの頃から「一生働ける仕事がしたい」という思いが当たり前のようにありました。小中学生の頃から自分の部屋のレイアウトを考えるのが楽しかったことや両親の影響もあり、大学は建築や住居について学べる大阪市立大学 生活科学部 住居学科へ進学。理系で技術を身につければ一生仕事ができるだろうし、当時は女性が少ない業界だったので、意匠的なことも女性視点を活かせば、自分の価値が出せるだろうと思い選択しました。大学では設計や製図について常に追求する姿勢を身につけられたと思います。

卒業後は積水ハウスへ技術の総合職として入社。ちょうど入社する2年前に男女雇用機会均等法が施行されたばかりだったので、社会的に女性が活躍する機運が高まっている時でした。共同住宅の設計を担当したのですが、現場でも珍しがられましたね。入社年に二級建築士の資格を取得しましたが、建築に携わる限り一級建築士の資格は重要です。私の場合、受験資格として3年の実務経験が必要でしたので、入社4年目での一発合格を目指しました。通勤時間や休日は資格取得のため、勉強漬けで必死でしたね。試験前に担当物件が増えてしまったのですが、上司に相談して調整していただきました。目標だった一発合格も達成でき、資格取得を応援・サポートしてくれた上司にも顔向けできたと思います。一級建築士を取得後は、お客様からの信頼も大きくなり、数億円という大型物件も安心して任せていただけるようになり、やりがいも大きくなりました。

2,ライフイベントに直面した時
仕事が楽しすぎて子どもを産むか迷ったけれど

入社5年目の27才の時に同じ部署の社員と結婚。私は元上司の誘いもあり、本社の技術本部へ異動したのですが、結婚で姓も仕事も変わり新たなスタートを切りました。3階建て住宅の開発を行う部署だったのですが、新商品のプロジェクトが商品を発売したばかりで、その商品の改良や開発を担当することに。プロジェクトの機運が高い中で、ワクワクしながら取り組めました。その後も私は省エネ設計などの部材開発のチームで、内装下地のパネル化の開発などを担当。総合住宅研究所で何回も実験を行ったり、作業服を着て住宅の組立も行ったり。重い石膏ボードは持てなくても、ビスを打っていましたね。

仕事が楽しすぎて、子どもを産むかどうか踏み切れないでいました。一方で商品を開発しているからこそ、実際に住むことでよりよい家づくりに活かすため、積水ハウスで自分たちの家を建てました。ですが、住んでみるとふたりでは広すぎて、家族がもう1人欲しいと感じ、子どもを産むことに。家を建てるという大きな決断を通してやっと踏み切れました。

1994年に出産したのですが、当時から待機児童の話題はありました。4月の年度初めに保育所に入りやすいと聞いており、私も早く復帰したいと考えていたので、4月に6カ月児になり保育所へ預けられるように9月に出産しました。妊娠中からどういう観点で子育てをしたらいいのか考えるため、図書館の育児書を片っ端からすべて読んだのですが、1人で子育てを抱え込まず、必要であればサポートを受けることが大事ということが見えてきました。実家の近くに家を建てていたので、両親にサポートしてもらえましたし、子どもが3才になってからは週2回のベビーシッターや家事のアウトソーシングも利用しながら、仕事と両立していきました。

子どもの成長とともにキャリアもステップアップ

私は子どもの頃から何でも自分でやりなさいと両親に育てられてきたのですが、それが結果的によかったと思っています。私も同じように子どもには「自分のことは自分で」と教えてきました。小学生くらいから私が出張でいない時などは、子どもがゴミを出してくれるなど、家事を手伝ってくれるようになりました。

子育てと並行しての仕事は大変でしたが充実していました。住宅性能に携わる部材開発は、内装、外装、躯体、法律等さまざまな部署と関わりながら仕事をすることが多く、その時々にプロジェクトを組んで開発を行う楽しさがモチベーションにつながっていました。

そのうちにリーダー、管理職として仕事をするようになり、より自分の意見を発信することが大事だと感じるようになりました。それだけではなく、自分の意見を発信するにはインプットも必要。そこで、課長時代には関西生産性本部主催の技術イノベーションスクールに参加しました。商品開発や技術開発など、ものづくりに携わる研究職の方が集まりマネジメント等を学ぶのですが、グループワークで仮説を立てて検証、証明するプロセスは、技術職の業務に携わる上で非常に役立ちました。プライベート面でもPTAや子ども会でリーダーシップをとりながら、みんなをまとめられるようになっていました。

3,ダイバーシティへの取り組み
開発とダイバーシティ推進は共通のやりがいがある

2014年に経営企画部ダイバーシティ推進室の設置に伴い異動し、女性管理職の登用や仕事と育児の両立をサポートする制度の作成、働き方改革など女性を始めとする多様な人材の活躍を推進する仕事に取り組むことになりました。

育児との両立には費用が掛かります。そこで、育児中のフルタイム勤務時にベビーシッターや一時預かりなどの保育費用の約50~70%を会社が負担する「スマートすくすくえいど」という制度を作りました。当社は育児で会社を辞める女性はほとんどいないため、各支店に1~2名は育休中の方がいます。会社としては働き盛りの20代~30代の女性社員にフルタイムで勤務していただくためにも、保育費用の負担が少ないように援助しています。
また、営業部門の多くは土・日に営業し、火・水が休みなのですが、日曜には通常通っている保育所とは別の保育所へ預けないといけない場合もあるので、その場合も「スマートすくすくえいど」の利用を可能にしています。また、1年以内に復帰する社員の復職時に日曜を含む保育園探しを支援する「保活コンシェルジュ」や、夫婦共日曜出勤の社員が日曜日も仕事ができるよう、日曜に夫婦交代で保育と出勤を分担する「パートナーシップスライド」、月1回の火曜休みを日曜休みに振り替える「ファミリーフレンドリーデイ」など、男女ともに仕事と育児の両立支援を拡充しています。

ダイバーシティ推進は、社員一人ひとり人生そのものを充実させるために新しい制度を作り、社員の皆さんが活躍できるようにしていくのですが、今まで技術職でしてきた開発と同じやりがいを感じています。

4,女性研究者へメッセージ
女性の視点をイノベーションに活かしてほしい

30代から40代の多くの方は仕事や子育ての両立時期ですが、子どもが成長すると子育てが楽になる分、自分の時間ができるようになります。子どもが幼い頃は大変かもしれませんが、成長したら次に何をするかが大事だと思います。

私は仕事とは別に、技術イノベーションスクールの修了生の仲間と今も技術の勉強会を3カ月に1回行っており、講師をアテンドする事務局を担当しています。また、大阪府建築士会の理事に参加し、建物の被災判定を行うなどまちづくり活動を行ったりしています。

これまで会社に育ててもらいましたし、仕事で得た知識やスキルを社会に還元し、社会の一員として少しでもよい社会にしていけるよう一石を投じることができればと思っています。

研究職の方の新しい物を生み出していく思考回路は、一生役に立つと思います。女性の視点をイノベーションに活かし、新しい切り口を設定し、切り込んで行って欲しいと思います。

バックナンバー

和歌山大学
本庄麻美子助教
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女性研究者一覧

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